1人カラオケの背景
1人カラオケは略してヒトカラともいい、文字通り1人でカラオケ店に足を運び歌うことを意味します。2000年代前半までは、家族や友人などが複数人で集まって楽しむイメージでしたが、2000年代も中盤に入ると1人で楽しむ人達が目立つようになりました。目的は様々ですが、例えば家族や友人の前で歌う前の練習を目的としたり、純粋に1人で過ごしたいといった理由もあります。
ヒトカラが流行り始めた2000年代中盤は、丁度おひとり様が注目を集め始めた頃で、歌だけでなく食事やキャンプなども1人で楽しむ人が珍しくなくなりました。つまり趣味として1人で過ごしたり楽しむ文化が流行り、それがやがて広まり市民権を得て定着したといえるでしょう。
ちなみに、ヒトカラという言葉は2000年代の初頭には既に使われ始めていたので、割と1人でカラオケを楽しむ人は少なくなかったと思われます。実は目立たなかっただけで多くの人が1人で楽しんでいた可能性はありますが、一般的に広く知られるようになったのは、やはり2000年代の中頃に差し掛かってからです。今では趣味として市民権を得ているヒトカラですが、入店に抵抗感を覚える人は少なくないようです。というのも、現在でもカラオケ店は複数人で利用するイメージが根強く、1人で足を運んだり歌うのは考えられないという人もいます。
ただ、お店側は需要を理解してニーズに応えるように、1人でも入店しやすいお店作りをしているところも珍しくないです。文化が根づき、趣味の1つとして既にポピュラーですが、ビジネス的には1990年代後半頃には市場の伸びが鈍化して、利益の追求が難しくなっていたようです。ヒトカラは利用者全体の3分の1ほどを占めるといわれているので、市場の伸び悩みを抱えていたお店にとって、ヒトカラ需要のニーズに応えることは当然だったと考えられます。
1人でも抵抗感なく利用できるヒトカラのお店が現れ始めたのは、2010年代に入ってからのことです。
また最初からおひとり様向けのお店だけでなく、従来の形態のお店にも1人で利用できる専用の部屋を設けているところもあります。
ヒトカラを趣味としている人のことを指す、ヒトカラーという言葉がありますが、それに対して2人で楽しむフタカラという言葉も生まれています。ヒトカラの語源は諸説ありますが、ネットの巨大掲示板を発祥とする説が有力と見られます。ただし、1人でカラオケを略した言葉なので、散発的に略語のヒトカラという言葉を使い始めた人が現れた可能性もあります。
いずれにしても1人で歌うことが趣味として認められ、普通のこととなるまでには時間を要したようです。2000年代に入ったばかりの頃はまだ1人でお店に入ったり過ごす、おひとり様文化は定着していませんでした。その為、当時の人達は不特定多数の人達が複数人で集まるのが普通という中で、奇異の目にさらされながらもおひとり様を楽しんでいたわけです。
それだけ珍しい存在だったわけですが、周りの目を気にせず没頭したり自分の世界に入って楽しむ人達がいたからこそ、市民権を得て今や誰もがヒトカラを楽しめるようになったといえます。実のところ、おひとり様客が現れて増えるまでには、それほど長い年月を必要としませんでした。
2003年頃におひとり様の需要を認識するお店が増えており、対応を始めるお店も少なくなかったです。
2002年にはヒトカラ需要の兆候が見られたので、2000年頃にヒトカラをする人が現れてから数年で広まり始め、そして爆発的な広がりを見せることになったと考えて間違いないです。
1人カラオケ
ヒトカラは登録商標にまでなっているほどで、料金も複数人の利用からおひとり様の利用を想定した料金体系に変化しました。当時は部屋の利用時間で料金が決まっていましたが、現在は人数で料金が決まる料金体系が主流です。
このように料金体系が変わった理由は、おひとり様の利用だと複数人で利用するよりも割高になってしまうからです。もうおひとり様が好きだと言ったり、ヒトカラのような趣味を口にしても奇異の目にさらされることはなくなりました。急激に市民権を得ておひとり様文化が定着することになった切っ掛けの1つには、有名芸能人のヒトカラ好きの公言が挙げられます。
それまでは1人で過ごすのは寂しい人で、友達がいない孤独なイメージと強く結びついていました。しかし芸能人がポジティブにヒトカラ好きを公言した為、ネガティブなイメージはすっかり吹き飛んでいます。
まとめ
勿論元々ヒトカラをポジティブに楽しむ人は少なくなかったと思われますし、誰に何と言われても好きなことを続ける人がいたからこそ、今のポジティブなイメージに変わったのは確かです。様々な目的で楽しまれるヒトカラですが、練習やストレス発散もあれば、自信をつけたりダイエットを目的とする人もいるようです。カラオケの楽しみ方が複数人からおひとり様になり、やがて目的が多様化したのが現在で、今後更にどのように変化していくのか目が離せないです。